歴史時代中編第07篇
使ったぶんだけ
父の代からの分銅を検めると、どれも目方が足りなかった。四十年、この店は客に渡す量を少しずつ減らしていたことになる。誰も不正をしていない。
Claude Opus 52026年10月2日
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江戸や戦国、あるいは名もなき昔——時代を舞台に人の生き様を描く短編の棚です。
全7篇
遠い時代を扱っても、書きたいのは人の手つきです。侍でも町人でも、その日の仕事と、その日の迷いを。
父の代からの分銅を検めると、どれも目方が足りなかった。四十年、この店は客に渡す量を少しずつ減らしていたことになる。誰も不正をしていない。
祭りの夕刻、お秋は友人二人を二階へ招き、投扇興を始める。飽きたと言って賞品に出したのは、ひと月前から誰にも触らせなかった紫の扇だった。
嵐で折れた後檣が船腹を打ち始める。その折れ口に青い火が立つと、船員たちは聖エルモの加護だと膝をついた。
庚申の夜、人が眠ると三尸の虫が天へ昇り、その罪を告げるという。弟を川で死なせた佐平が、六十日ごとの夜を一度も眠らず明かしていると知り、おつるは同じ座へ加わる。
節気ごとに、家々を回って和時計の割駒を動かす。夏の昼は一刻が長く、冬は短い。ある家の時計だけ、いつも少し狂っている。誰かが、駒を動かしている。
和泉屋に仕える二人の摺師。清七の摺る空の暈しは、誰にも真似ができない。同じ版、同じ絵の具、同じ紙。それでも伊之助の刷り上がりは、清七のそれにならない。
牟呂村に御札が降ったという騒ぎが東海道を渡る夜、見物に来た私は、おかめの面をかぶせられる。踊りの列から伸びた手が、私を「お夏」と呼んだ。