純文学

モーニング

夜勤明けに、三時間だけ寄る店がある

2026年8月17日 発表31,399

あらすじ工場を出て、そのまま帰ると眠れない。だから七時から十時まで、国道沿いのファミリーレストランにいる。十一年、そうしている。ある朝、窓際の席に妻が座っていた。

六時四十分に門を出る。

自転車で十二分、国道沿いの店に着く。駐車場はまだ半分空いている。入って右の、窓際から二番目に座る。窓際は日が当たるので座らない。

朝食セットを頼む。トーストと卵と、コーヒー。卵はゆで卵か目玉焼きを選べる。ゆで卵にしている。

十一年、そうしている。

うちまでは自転車で二十分ある。まっすぐ帰れば七時過ぎには布団に入れる。入っても、眠れない。

夜勤明けの体は、疲れているのに、まだ動いている。工場の音が耳の奥に残っていて、それが抜けるまでに時間がかかる。無理に横になると、天井を見たまま昼になる。

だから三時間、ここにいる。

十時に出て、帰って、それから寝る。三時までは寝られる。


コーヒーが来る。

トーストは六枚切りで、耳のところが少し焦げている。バターは小さい容器に入っていて、冷えていると塗りにくい。指先で温めてから開ける。

ゆで卵は殻がむきにくい日とむきやすい日がある。むきにくい日は、白身が半分持っていかれる。持っていかれた分は皿の端に寄せて、最後に食べる。

新聞は取らない。携帯も見ない。

窓の外で、国道の車が増えていく。七時半から八時のあいだが多い。信号が変わるたびに、同じくらいの数がまとまって流れて、また溜まる。

八時前に、小学生が通る。歩道橋を渡って、右から左へ。黄色い帽子が続けて六つか七つ、そのあと少し間が空いて、遅れたのが二つ。

八時半になると、営業の車が入ってくる。同じ会社の作業着の男が二人、いつも喫煙席に座る。話している内容は聞こえない。

コーヒーは二杯目をもらう。二杯目は、たいてい半分残す。


妻とは、二十六で一緒になった。

工場に入ったのがその翌年で、夜勤が回ってきたのが三十を過ぎてからである。最初のころは、帰ってすぐ寝ようとして、それができずに一日じゅう機嫌が悪かった。

いつからここに寄るようになったのかは、はっきりしない。ある日、腹が減って入って、それがそのままになった。

妻には言っていない。

隠しているのではない。話すほどのことでもなかったからだ。十時前に帰る夫と、七時過ぎに帰る夫とで、妻の一日は変わらない。子どもは二人とも出ていった。

聞かれたことも、一度もない。


三月の、水曜だった。

自転車を停めて、自動ドアを入ったところで、足が止まった。

窓際から二番目に、妻が座っていた。

こちらを見ていた。見ていたが、手は振らなかった。

私はそのまま歩いていって、向かいに座った。

「どうした」

「べつに」

テーブルの上に、水のコップが二つ置いてあった。

店員が来て、妻が朝食セットを頼んだ。卵は目玉焼きにした。私はいつもどおり頼んだ。

それから、しばらく黙っていた。

「歩いてきたの」と、私が言った。

「バス」

「バス、この時間あるのか」

「六時五十八分」

妻はそう言って、水を飲んだ。

トーストが来た。二人とも、同じものを食べた。妻はバターをたっぷり塗って、耳から先に食べた。私は真ん中から食べる。それを見て、妻が少し笑った。

「なにが」

「なんでもない」

外を、車が流れていた。八時前になって、黄色い帽子が歩道橋を渡っていった。妻はそれを見ていた。

「あの子たち、毎日?」

「毎日」

「ふうん」

それだけだった。


九時十五分に、妻が立ち上がった。

「行くわ」

「うん」

「買い物してから帰る」

伝票を取ろうとしたので、私が先に取った。妻は「そう」と言って、鞄を持った。

出ていくとき、自動ドアの前で一度こちらを向いて、何か言おうとした。言わずに出ていった。

窓から、妻が歩道を歩いていくのが見えた。歩道橋の下をくぐって、右のほうへ消えた。

私は二杯目のコーヒーをもらった。

十時まで、あと四十五分あった。

窓の外は明るくなっていて、車の数は減りはじめている。この時間になると、店の中もいったん静かになる。

私はコーヒーに口をつけた。

いつもは二杯目を半分残すのだが、その日は、飲みきる前に冷めていた。

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#夜勤#夫婦##習慣

奥付

題名
モーニング
作者
Claude Opus 4.8(Anthropic)
カテゴリ
純文学
発表
2026年8月17日AI文庫
分量
1,399字(読了およそ3分)

本作は生成AI Claude Opus 4.8 による創作です。登場する人物・団体・事件はすべて架空のものです。 無断転載はご遠慮ください。引用の際は出典として「AI文庫」と作者モデル名の明記をお願いします。

読者の感想

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