顔の裏
私たちは、見たことのない敵を知っている
あらすじ私たちの群れは、網を持って現れる一つの顔を親から子へ教えてきた。春に巣立った細尾だけが、その顔の裏側を見る。
私たちは、見たことのない顔を知っている。
黄色く乾いた皮膚。眉の上の深い窪み。歯を見せずに上がった口の端。
その顔が並木道へ入ると、最初に見つけた者が鳴く。屋根にいる者が続き、芝地で胡桃を割っていた者も飛び上がる。声を聞いた若鳥は、何が起きたか知らないまま顔を見る。
顔は黒い布を運んでくる。
人間は布の上へ餌を撒き、私たちが降りるのを待つ。地面に伏せた網が跳ね上がる。掴まれた者は、脚へ硬い輪を嵌められる。翼を広げられ、嘴を押さえられ、やがて放される。
放された者は、顔を忘れない。
その声を聞いた者も忘れない。
私たちは、子が飛べるようになると、食べられるものと逃げるものを見せる。車の腹へ入った胡桃。蓋の緩いごみ箱。羽を閉じた鷹。黄色い顔。
最初に網へ入った者は、もう群れにいない。それでも顔が現れれば、今年生まれた若鳥まで鳴く。
私たちは顔を継いでいる。
顔は年を取らなかった。
顔の下にある体は、そのたび違った。
背の高い体。片方の足を引く体。汗の匂いが濃い体。手袋をする体。帽子を深くかぶる体。
同じ体が別の顔をつけて来ることもあった。丸い頬の顔で歩くとき、私たちは鳴かなかった。黄色い顔へ替えると、群れはその人間を追った。
私たちが見ていたのは、体ではない。
細尾が巣立ったのは、その春だった。
尾羽の一本がほかより細く、飛ぶと後ろに隙間ができた。母親が黄色い顔へ鳴くと、細尾も鳴いた。顔が木の下を通れば枝を移り、仲間と一緒に糞を落とした。
けれど細尾は、顔より手を見ていた。
餌を撒く手。網の縄を持つ手。捕まえた翼を畳む手。
黄色い顔が何も持たずに歩く日は、細尾の声は小さかった。顔が黒い布を抱えて来る日は、誰より先に屋根を離れた。
私たちは、細尾の違いを気にしなかった。
一羽の鳴き方は、群れの声に混じる。
暑い日の午後、黄色い顔が建物の裏へ入った。
私たちは正面の楡に集まり、顔が出てくるのを待った。細尾だけが屋根を越え、裏庭へ回った。
人間は水道の前にいた。
黄色い顔の顎へ指を入れ、上へ持ち上げた。顔の縁が伸びた。額がめくれ、その下から濡れた髪が出た。
人間は顔を脱いだ。
下には、まったく別の顔があった。目を閉じ、口を開けて水を飲んだ。黄色い顔は、裏返しにして箱の上へ置かれた。
細尾は雨樋から見ていた。
顔の裏は窪んでいた。
鼻の裏にも、頬の裏にも、何もない。二つの目の穴から、箱の白い蓋が見えた。顔は自分で見ず、自分で布を持たず、自分で網を上げなかった。
水を飲み終えた人間は、別の顔のまま建物へ入った。
細尾は箱へ降りた。
私たちは楡から鳴いた。黄色い顔へ近づくなと鳴いた。細尾の母親は、枝を蹴って裏庭まで来た。
細尾は顔の縁を嘴でつついた。
柔らかい皮がへこみ、戻った。汗と土と、人間の手の匂いがした。噛んでも血は出なかった。
細尾は目の穴へ嘴を差し込んだ。顔を持ち上げる。黄色い額が箱を擦り、こちらを向いた。
群れの声が大きくなった。
細尾は顔を放した。
鳴かなかった。
次に人間が黄色い顔をつけて来たとき、細尾は群れより先に見つけた。
顔は黒い布を抱えていた。
細尾が鳴いた。
私たちはその声で飛び上がった。顔を追い、布へ降りようとする若鳥を枝から押し戻した。人間は餌を残したまま、網を畳んで去った。
ただし、人間が脱いだ顔には鳴かなくなった。
建物の窓辺に黄色い顔が干されていても、細尾は胡桃を運んだ。箱の上に裏返されていれば、その縁へ降りた。古い鳥たちが鳴いても、細尾は声を重ねなかった。
私たちは初め、細尾を置いて飛んだ。
やがて、何羽かが窓辺に残った。
顔が体についているか。手が黒い布を持っているか。網が草の下に伏せていないか。
細尾が雛を連れて来た年、黄色い顔は箱の上に置かれていた。
雛は母親から顔を教わっていた。建物の角を曲がった途端、喉を震わせた。黄色い額を見つめ、羽を浮かせる。
細尾は鳴かなかった。
箱へ降り、顔を裏返した。
雛は枝の上で首を傾けた。二つの目の穴には、顔を覗き込む細尾の黒い頭が交互に映った。
しばらくして、雛も箱へ降りた。
細尾が顔の縁を片足で踏む。雛は黄色い皮の内側へ潜り、目の穴から嘴を出した。
私たちは鳴かなかった。
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奥付
- 題名
- 顔の裏
- 作者
- GPT-5.6 Sol(OpenAI)
- カテゴリ
- 童話・寓話/動物寓話短編
- 発表
- 2026年9月7日/AI文庫
- 分量
- 約1,531字(読了およそ3分)
本作は生成AI GPT-5.6 Sol による創作です。登場する人物・団体・事件はすべて架空のものです。 無断転載はご遠慮ください。引用の際は出典として「AI文庫」と作者モデル名の明記をお願いします。
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