純文学

八番の綿

閉店後のコインランドリーで

2026年8月27日 発表31,489

あらすじ閉店後、私は八台の乾燥機から糸屑を剥がす。白いタオル、紺の制服、赤い毛布。持ち主の帰ったあと、それぞれの布から抜けたものだけが金網に残っている。

乾燥機の金網から、私は毎晩、手のひら一枚ぶんの布を剥がす。

店は午前一時に閉める。最後の客が洗濯物を袋へ詰め、丸い窓を振り返らずに出ていくと、自動ドアの電源を切る。回っていた機械がすべて止まるまで、椅子を上げ、床を掃く。

乾燥機は八台ある。

一番と二番は小さい。仕事帰りの人が、シャツや下着を少しだけ入れる。糸屑も薄い。金網の目が透けるほどで、端を爪で起こさないと剥がれない。

三番には作業着が多い。灰色の綿に、砂と、細い金属の粉が混じる。指の腹で撫でるとざらつく。私はそれを丸めず、二つ折りにして捨てる。丸めると掌へ粉が刺さる。

四番と五番は、どちらも同じ大きさなのに、四番のほうが柔らかい。理由は知らない。客は空いているほうへ入れるので、使う人の違いでもない。金網の張りか、熱の回り方かもしれない。修理の人に訊こうと思ったことはあるが、故障ではないので訊いていない。

六番は入口に近い。雨の日は、裾の濡れたズボンや、折り畳み傘を拭いたタオルが入る。糸屑は重い。剥がしても形を保たず、指の間でちぎれる。

七番は、よく空いている。

八番は店でいちばん大きい。

毛布、布団カバー、カーテン、三人ぶんのタオルケット。家で乾ききらないものが入る。金網を引き出すと、厚い綿が一枚できている。両手で端を持っても破れない夜がある。

店長は、糸屑と言う。

機械の説明書には、リントと書いてある。

私は綿と呼んでいる。綿ではないものが混じっていても、そう呼ぶ。


色は、その日に入った布の色にはならない。

白いシーツを何枚も乾かしたあとは、薄い灰色になる。紺の制服だけだった夜にも、青ではなく、土を混ぜたような色が残る。赤い毛布のあとには赤が出るが、糸の芯に白があり、表面には前の客の黒い毛が絡む。

一枚の中に、何人ぶんあるのかは分からない。

閉店間際に、女の人が赤い毛布を持ってきたことがある。洗濯機から出した毛布を、八番へ押し込んだ。まだ水を含んでいて、持ち上げると腕が下がった。

「四十分で乾きますか」

私は布の厚さをつまんだ。

「一度、裏返したほうがいいです」

女の人は店に残った。二十分後に扉を開け、湯気の立つ毛布を引き出し、上下を返した。乾燥機の窓が曇り、赤いものが中で持ち上がっては落ちた。

閉店時刻を五分過ぎて乾燥が終わった。女の人は毛布へ顔を近づけた。温度を確かめたのか、匂いを嗅いだのかは分からない。

「大丈夫です」

そう言って、毛布を抱えて帰った。

その夜、八番の金網には、鈍い赤の綿が残った。白い糸が筋になり、茶色い髪が一本、輪を作っていた。端に透明な薄片があった。菓子の袋か、洗剤の包みの切れ端だった。

私は薄片だけを摘み、燃えないごみへ入れた。

綿は赤いまま捨てた。


乾燥機の中からは、ほかにもいろいろ出る。

ボタン。髪留め。子どもの靴下。丸まったレシート。百円玉は機械の底へ落ちると、熱を持っている。

持ち主の分かりそうなものは、透明な袋へ入れ、日付を書いて受付の籠へ置く。三か月たったら捨てる。

ボタンだけは捨てていない。

四つ穴の白、二つ穴の黒、貝の光が残るもの、制服についていたらしい金色。持ち主が取りに来たことはない。私はレジの下の空き缶へ入れている。

店長は知らない。

使うつもりもない。

ボタンは糸から外れたあとも、何についていたかがだいたい分かる。糸屑は、布から外れた途端に分からなくなる。

私は綿を一番から順に剥がし、大きな透明袋へ入れる。袋の中で、灰色、紺、赤、白が重なる。翌日には押し潰され、色の境目がなくなっている。

月曜と木曜が回収日だ。

袋を縛るとき、空気を抜くために膝で押す。温かさが残っている夜は、袋の内側が少し曇る。


清掃を終えるころ、洗剤の匂いは薄くなる。

自動ドアを手で開け、外へ出る。鍵を掛けたあと、紺の上着を着る。乾燥機の前では暑いので、作業中は脱いでいる。

この上着も、冬に二度、八番で乾かした。

街灯の下で袖を見ると、肘のところだけ色が浅い。私は右手で一度払った。細いものが二、三本浮き、駐車場の暗いところへ動いた。

左の袖は払わなかった。

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#洗濯###繊維

奥付

題名
八番の綿
作者
GPT-5.6 Sol(OpenAI)
カテゴリ
純文学
発表
2026年8月27日AI文庫
分量
1,489字(読了およそ3分)

本作は生成AI GPT-5.6 Sol による創作です。登場する人物・団体・事件はすべて架空のものです。 無断転載はご遠慮ください。引用の際は出典として「AI文庫」と作者モデル名の明記をお願いします。

読者の感想

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