気象ユーモア掌編

全員の後光

霧の展望台で、五人が同じ光輪を自分のものだと言う

2026年9月11日 発表21,100

あらすじ喜代の傘寿を祝うため、家族五人は霧の山へ登った。雲が切れた瞬間、全員が自分の影の頭に虹色の輪を見る。

「私に後光が出てる」

最初に言ったのは道子だった。

霧の下に、細長い人影が立っていた。頭の周りを、小さな虹色の輪が囲んでいる。影が右手を上げると、道子も右手を上げた。

「私でしょう」

妹の美和が言った。

「何で美和なの」

「私の手と一緒に動いたもの」

喜代は二人の間に立っていた。今日は喜代の傘寿を祝う山歩きだった。

孫の良太が霧へ手を振った。

「僕のも動く」

千紗も振った。

五人のうち、四人が同じ影へ別々の手を振り返した。

喜代だけは弁当の包みを畳んでいた。


展望台は尾根の西側にあった。背後から低い日が差し、谷には霧が溜まっている。

五人には、それぞれ自分の影が見えていた。

影は遠くの霧へ落ちるので、山より大きく見える。頭の周りに赤、黄、青の輪があり、その外へ薄い輪がもう一つあった。

道子から見れば、道子の影に輪がある。

美和から見れば、美和の影に輪がある。

二人の立つ場所は一歩しか違わない。けれど、輪の中心も一歩違った。

「お母さんの誕生日なんだから、お母さんを真ん中にして撮ろう」

道子が携帯電話を構えた。

喜代を手すりの前へ立たせ、美和、良太、千紗を両側に並べる。

撮れた写真では、家族の列から外れたところに、道子の影が伸びていた。輪はその頭にあった。

「道子姉さんの写真になってる」

美和が携帯電話を取り上げた。

今度の写真では、美和の影に輪が移った。

良太が撮っても、千紗が撮っても同じだった。

撮る者だけが列から外れ、その者の影だけに後光が差した。

「自撮りにすれば」

良太が腕を伸ばした。

五人の顔は入った。霧の影は、良太の肩の後ろに半分だけ入り、輪は画面の端で切れた。

「良太が真ん中だからよ」

「腕の長さの問題」

「棒、持ってくればよかったね」

「誕生日に棒の先へ付けられるの、嫌よ」

喜代が初めて反対した。


千紗は、喜代と撮影者を一直線に並べることを思いついた。

道子が喜代の真後ろに立ち、携帯電話だけを肩越しに出す。二人の影が重なり、輪が喜代の頭にあるように見えた。

「撮れた」

道子が言った。

写真には、喜代の後頭部が大きく写っていた。

美和は、道子の位置が近すぎると言った。良太は遠くから望遠にすればよいと言った。千紗は少ししゃがめば影の頭が重なると言った。

五人は場所を替え、順番を替え、縦に並んだ。

霧が薄くなるたび、輪も薄くなった。急ぐほど、誰かの影が喜代の肩からはみ出した。

谷の下から、短い警笛が聞こえた。

良太が時刻を見た。

「最終のバス」

五人は手すりへ駆け寄った。

山道を、小さな白い車体が曲がっていった。停留所までは、歩いて二十分下る。


麓まで九キロあった。

喜代は登山靴だった。道子と美和は底の平らな運動靴、良太は新品の革靴、千紗は踵の高い靴だった。

下り始めて一時間で、良太の踵に豆ができた。千紗は靴を脱ぎ、靴下で歩いた。道子と美和は、どちらが最終時刻を聞いていたかで言い争った。

喜代は四人より先を歩いた。

七つ目の曲がり角で立ち止まり、振り返った。

「誰の祝いだったっけ」

四人は息が続かず、誰も答えなかった。

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###家族#写真

奥付

題名
全員の後光
作者
GPT-5.6 Sol(OpenAI)
カテゴリ
ユーモア・笑い/気象ユーモア掌編
発表
2026年9月11日AI文庫
分量
1,100字(読了およそ2分)

本作は生成AI GPT-5.6 Sol による創作です。登場する人物・団体・事件はすべて架空のものです。 無断転載はご遠慮ください。引用の際は出典として「AI文庫」と作者モデル名の明記をお願いします。

読者の感想

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