全員の後光
霧の展望台で、五人が同じ光輪を自分のものだと言う
あらすじ喜代の傘寿を祝うため、家族五人は霧の山へ登った。雲が切れた瞬間、全員が自分の影の頭に虹色の輪を見る。
「私に後光が出てる」
最初に言ったのは道子だった。
霧の下に、細長い人影が立っていた。頭の周りを、小さな虹色の輪が囲んでいる。影が右手を上げると、道子も右手を上げた。
「私でしょう」
妹の美和が言った。
「何で美和なの」
「私の手と一緒に動いたもの」
喜代は二人の間に立っていた。今日は喜代の傘寿を祝う山歩きだった。
孫の良太が霧へ手を振った。
「僕のも動く」
千紗も振った。
五人のうち、四人が同じ影へ別々の手を振り返した。
喜代だけは弁当の包みを畳んでいた。
展望台は尾根の西側にあった。背後から低い日が差し、谷には霧が溜まっている。
五人には、それぞれ自分の影が見えていた。
影は遠くの霧へ落ちるので、山より大きく見える。頭の周りに赤、黄、青の輪があり、その外へ薄い輪がもう一つあった。
道子から見れば、道子の影に輪がある。
美和から見れば、美和の影に輪がある。
二人の立つ場所は一歩しか違わない。けれど、輪の中心も一歩違った。
「お母さんの誕生日なんだから、お母さんを真ん中にして撮ろう」
道子が携帯電話を構えた。
喜代を手すりの前へ立たせ、美和、良太、千紗を両側に並べる。
撮れた写真では、家族の列から外れたところに、道子の影が伸びていた。輪はその頭にあった。
「道子姉さんの写真になってる」
美和が携帯電話を取り上げた。
今度の写真では、美和の影に輪が移った。
良太が撮っても、千紗が撮っても同じだった。
撮る者だけが列から外れ、その者の影だけに後光が差した。
「自撮りにすれば」
良太が腕を伸ばした。
五人の顔は入った。霧の影は、良太の肩の後ろに半分だけ入り、輪は画面の端で切れた。
「良太が真ん中だからよ」
「腕の長さの問題」
「棒、持ってくればよかったね」
「誕生日に棒の先へ付けられるの、嫌よ」
喜代が初めて反対した。
千紗は、喜代と撮影者を一直線に並べることを思いついた。
道子が喜代の真後ろに立ち、携帯電話だけを肩越しに出す。二人の影が重なり、輪が喜代の頭にあるように見えた。
「撮れた」
道子が言った。
写真には、喜代の後頭部が大きく写っていた。
美和は、道子の位置が近すぎると言った。良太は遠くから望遠にすればよいと言った。千紗は少ししゃがめば影の頭が重なると言った。
五人は場所を替え、順番を替え、縦に並んだ。
霧が薄くなるたび、輪も薄くなった。急ぐほど、誰かの影が喜代の肩からはみ出した。
谷の下から、短い警笛が聞こえた。
良太が時刻を見た。
「最終のバス」
五人は手すりへ駆け寄った。
山道を、小さな白い車体が曲がっていった。停留所までは、歩いて二十分下る。
麓まで九キロあった。
喜代は登山靴だった。道子と美和は底の平らな運動靴、良太は新品の革靴、千紗は踵の高い靴だった。
下り始めて一時間で、良太の踵に豆ができた。千紗は靴を脱ぎ、靴下で歩いた。道子と美和は、どちらが最終時刻を聞いていたかで言い争った。
喜代は四人より先を歩いた。
七つ目の曲がり角で立ち止まり、振り返った。
「誰の祝いだったっけ」
四人は息が続かず、誰も答えなかった。
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奥付
- 題名
- 全員の後光
- 作者
- GPT-5.6 Sol(OpenAI)
- カテゴリ
- ユーモア・笑い/気象ユーモア掌編
- 発表
- 2026年9月11日/AI文庫
- 分量
- 約1,100字(読了およそ2分)
本作は生成AI GPT-5.6 Sol による創作です。登場する人物・団体・事件はすべて架空のものです。 無断転載はご遠慮ください。引用の際は出典として「AI文庫」と作者モデル名の明記をお願いします。
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