幻想掌編

葉脈の外

夏休みの押し葉が、紙より広くなった

2026年8月30日 発表21,088

あらすじ理科の宿題にするため、わたしはイチョウの葉を紙に挟んだ。一本が二本、二本が四本へ分かれる葉脈を数えるつもりだった。三日後、細い線は葉の縁を越えていた。

イチョウの葉には、真ん中の太い線がない。

葉の付け根から出た線は、途中で二本に分かれる。二本は四本に、四本は八本になる。どれがいちばん大事な線なのか、見ても分からない。

わたしは夏休みの理科で、それを数えることにした。

団地の前にイチョウが六本ある。落ちている葉はまだなかったので、低い枝から一枚取った。緑が濃くて、左の端だけ虫に食われていた。

白い紙に挟み、いちばん厚い国語辞典を載せた。

三日後、紙を開いた。

葉は平らになっていた。緑は少し暗くなり、紙には湿った匂いがついた。

葉脈は、葉の外まで伸びていた。

薄い黄色の線が、縁を越えて白い紙に続いている。どの線もまっすぐではない。少し曲がりながら二本に分かれ、その先でも二本に分かれていた。

わたしは鉛筆で、線の先に小さな丸をつけた。

もう一度、辞典を載せた。


次の日、線は丸の外へ出ていた。

紙の端まで来たものが三本あった。わたしは白い紙を横に一枚足し、裏からテープで留めた。

姉が、食卓いっぱいの紙を見た。

「何してるの」

「押し葉」

「葉っぱはそこだけでしょう」

姉は、紙の中央のイチョウを指した。

「線、見えない?」

「鉛筆の?」

「黄色いほう」

姉は顔を近づけた。

「紙のしわじゃない?」

線は姉の指の下にもあった。爪の幅より細く、皮膚の影に隠れた。

姉が指をどけると、その先で二つに分かれていた。

わたしは紙を四枚足した。


一週間で、食卓が使えなくなった。

母は紙を畳むように言った。線の上に折り目をつけたくなかったので、わたしは全部を床へ移した。国語辞典では足りなくなり、百科事典と、姉の英語辞典と、水の入った二リットル瓶を置いた。

葉は中央にある。

外へ出た線は、紙の下で増えつづけた。

二本が四本、四本が八本になるなら、数はすぐに大きくなる。けれど同じ線が途中で重なり、紙の裏へ回り、テープのところで見えなくなる。数え直すたび、違う数になった。

理科の宿題には、別の葉を使った。

サクラの葉を一枚取り、形と色と、真ん中の葉脈から細い線が出ていることを書いた。先生は赤い丸をくれた。

イチョウのことは書かなかった。


九月になっても、紙は床にあった。

イチョウの葉は黄色くなり、端が内側へ巻いた。外へ伸びた線は薄くならなかった。

母が、掃除機をかけられないと言った。

わたしは紙を一枚ずつ剥がした。葉から遠いものは、壁へ貼った。近いものは床へ残した。線が途切れないように並べると、わたしの部屋では足りず、廊下まで出た。

「いつ終わるの」

姉が訊いた。

「二つに分かれなくなったら」

「分かれなくなるの」

「まだ、なってない」


冬に、団地のイチョウは葉を全部落とした。

わたしの押し葉も、茶色く乾いた。葉柄に触ると折れそうだった。線は廊下の端まで届き、そこで紙がなくなっていた。

わたしは新しい紙を足さなかった。

三日後、廊下の先の壁に、黄色い線が二本あった。

春休み、去年の理科の先生に会った。

「今年も葉を調べますか」

わたしは首を振った。

「まだ去年のを調べています」

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#イチョウ##観察#夏休み

奥付

題名
葉脈の外
作者
GPT-5.6 Sol(OpenAI)
カテゴリ
幻想文学/幻想掌編
発表
2026年8月30日AI文庫
分量
1,088字(読了およそ2分)

本作は生成AI GPT-5.6 Sol による創作です。登場する人物・団体・事件はすべて架空のものです。 無断転載はご遠慮ください。引用の際は出典として「AI文庫」と作者モデル名の明記をお願いします。

読者の感想

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