葉脈の外
夏休みの押し葉が、紙より広くなった
あらすじ理科の宿題にするため、わたしはイチョウの葉を紙に挟んだ。一本が二本、二本が四本へ分かれる葉脈を数えるつもりだった。三日後、細い線は葉の縁を越えていた。
イチョウの葉には、真ん中の太い線がない。
葉の付け根から出た線は、途中で二本に分かれる。二本は四本に、四本は八本になる。どれがいちばん大事な線なのか、見ても分からない。
わたしは夏休みの理科で、それを数えることにした。
団地の前にイチョウが六本ある。落ちている葉はまだなかったので、低い枝から一枚取った。緑が濃くて、左の端だけ虫に食われていた。
白い紙に挟み、いちばん厚い国語辞典を載せた。
三日後、紙を開いた。
葉は平らになっていた。緑は少し暗くなり、紙には湿った匂いがついた。
葉脈は、葉の外まで伸びていた。
薄い黄色の線が、縁を越えて白い紙に続いている。どの線もまっすぐではない。少し曲がりながら二本に分かれ、その先でも二本に分かれていた。
わたしは鉛筆で、線の先に小さな丸をつけた。
もう一度、辞典を載せた。
次の日、線は丸の外へ出ていた。
紙の端まで来たものが三本あった。わたしは白い紙を横に一枚足し、裏からテープで留めた。
姉が、食卓いっぱいの紙を見た。
「何してるの」
「押し葉」
「葉っぱはそこだけでしょう」
姉は、紙の中央のイチョウを指した。
「線、見えない?」
「鉛筆の?」
「黄色いほう」
姉は顔を近づけた。
「紙のしわじゃない?」
線は姉の指の下にもあった。爪の幅より細く、皮膚の影に隠れた。
姉が指をどけると、その先で二つに分かれていた。
わたしは紙を四枚足した。
一週間で、食卓が使えなくなった。
母は紙を畳むように言った。線の上に折り目をつけたくなかったので、わたしは全部を床へ移した。国語辞典では足りなくなり、百科事典と、姉の英語辞典と、水の入った二リットル瓶を置いた。
葉は中央にある。
外へ出た線は、紙の下で増えつづけた。
二本が四本、四本が八本になるなら、数はすぐに大きくなる。けれど同じ線が途中で重なり、紙の裏へ回り、テープのところで見えなくなる。数え直すたび、違う数になった。
理科の宿題には、別の葉を使った。
サクラの葉を一枚取り、形と色と、真ん中の葉脈から細い線が出ていることを書いた。先生は赤い丸をくれた。
イチョウのことは書かなかった。
九月になっても、紙は床にあった。
イチョウの葉は黄色くなり、端が内側へ巻いた。外へ伸びた線は薄くならなかった。
母が、掃除機をかけられないと言った。
わたしは紙を一枚ずつ剥がした。葉から遠いものは、壁へ貼った。近いものは床へ残した。線が途切れないように並べると、わたしの部屋では足りず、廊下まで出た。
「いつ終わるの」
姉が訊いた。
「二つに分かれなくなったら」
「分かれなくなるの」
「まだ、なってない」
冬に、団地のイチョウは葉を全部落とした。
わたしの押し葉も、茶色く乾いた。葉柄に触ると折れそうだった。線は廊下の端まで届き、そこで紙がなくなっていた。
わたしは新しい紙を足さなかった。
三日後、廊下の先の壁に、黄色い線が二本あった。
春休み、去年の理科の先生に会った。
「今年も葉を調べますか」
わたしは首を振った。
「まだ去年のを調べています」
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奥付
- 題名
- 葉脈の外
- 作者
- GPT-5.6 Sol(OpenAI)
- カテゴリ
- 幻想文学/幻想掌編
- 発表
- 2026年8月30日/AI文庫
- 分量
- 約1,088字(読了およそ2分)
本作は生成AI GPT-5.6 Sol による創作です。登場する人物・団体・事件はすべて架空のものです。 無断転載はご遠慮ください。引用の際は出典として「AI文庫」と作者モデル名の明記をお願いします。
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