四桁
荷物が届くたび、彼から一行だけ届く
あらすじ別れたあとも、通販の届け先は彼の部屋のままだった。荷物が届くたび、彼から一行だけ連絡が来る。宅配ボックスの番号と、暗証番号の四桁。
登録住所を変えるのを忘れていた、というのは半分だけ本当だ。
三月に部屋を出て、四月に一度だけ変えた。五月に、戻した。そのことは誰にも言っていない。
荷物が届くと、彼から連絡が来る。いつも同じ形をしている。
「宅配ボックス七 〇五一七」
それだけだ。挨拶も、句点もない。七分後に既読がつくこともあれば、二日つくこともある。こちらから何か送っても、返ってこない。
わたしはその一行を、電車のなかで何度も開く。文字はいつも同じなので、開いても新しいことは何も起きない。それでも開く。
マンションは十一階建てで、宅配ボックスだけがオートロックの外側にある。
だから、わたしは中に入れない。入る必要もない。
夕方に行くと、住人が何人か出入りする。買い物袋を提げた女のひとが、わたしの後ろで暗証番号を打った。自分の番号を打つ音は、他人が打つ音とまったく同じだった。
七番の扉のパネルに、四桁を打ちこむ。
〇五一七。
五月十七日は、付き合いはじめた日だ。
彼はその番号を変えていない。半年、変えていない。
変えていないのが、覚えているからなのか、面倒なだけなのかを、わたしは考えないようにしている。考えると、どちらであってほしいのかが分からなくなる。
かちり、と鳴って、扉が浮く。
荷物を取り出して、閉める。もう一度、かちり、と鳴る。
見上げると、十一階まで同じ形の窓が並んでいる。どれが彼の部屋なのかは、もちろん知っている。知っているが、この時間はいつも暗い。
駅まで歩いて戻る。荷物は、たいてい軽い。
先月、友人と飲んだときに聞かれた。
「あのひととは、もう?」
「ぜんぜん」
そう答えて、枝豆をつまんだ。友人は「そっか」と言って、別の話をはじめた。わたしはうなずきながら、鞄のなかで携帯が震えていないことを確かめていた。
嘘をついたつもりはなかった。連絡は取っていない。向こうから来る一行は、連絡とは言わないと思う。
帰りの電車で、その一行をもう一度開いた。三週間前のものだった。
先月は三回、今月はもう四回になる。
買っているものは、洗剤の詰め替えとか、靴下とか、その気になれば駅前で買えるものばかりだ。届いたものの半分は、袋も開けずに部屋の隅に積んである。
きのう、いちばん下の袋を開けてみた。黒い靴下が三足入っていた。同じものが、引き出しにもう七足ある。数えてから、袋に戻した。戻してから、なぜ戻したのだろうと思った。履けばいいのだ。
引き出しを閉めて、部屋を見た。積んである袋は、どれも角がへこんでいて、宅配ボックスの棚の幅とちょうど同じかたちをしていた。
先週、カートに入れたまま二日ほど眺めていたものがある。要るかどうかを考えていたのではない。今週すでに一度届いていたので、続けて頼むと何か思われるだろうか、と考えていた。
指がボタンの上で止まった。
止まってから、押した。
三日後に「宅配ボックス三 〇五一七」と来た。
わたしはボックスの前に立ちながら、次に何を買うかを考えていた。まだ切れていない洗剤のことを考えていた。
かちり、と鳴った。
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奥付
- 題名
- 四桁
- 作者
- Claude Opus 4.8(Anthropic)
- カテゴリ
- 恋愛小説/恋愛掌編
- 発表
- 2026年7月31日/AI文庫
- 分量
- 約1,111字(読了およそ2分)
本作は生成AI Claude Opus 4.8 による創作です。登場する人物・団体・事件はすべて架空のものです。 無断転載はご遠慮ください。引用の際は出典として「AI文庫」と作者モデル名の明記をお願いします。
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