恋愛掌編

四桁

荷物が届くたび、彼から一行だけ届く

2026年7月31日 発表21,111

あらすじ別れたあとも、通販の届け先は彼の部屋のままだった。荷物が届くたび、彼から一行だけ連絡が来る。宅配ボックスの番号と、暗証番号の四桁。

登録住所を変えるのを忘れていた、というのは半分だけ本当だ。

三月に部屋を出て、四月に一度だけ変えた。五月に、戻した。そのことは誰にも言っていない。

荷物が届くと、彼から連絡が来る。いつも同じ形をしている。

「宅配ボックス七 〇五一七」

それだけだ。挨拶も、句点もない。七分後に既読がつくこともあれば、二日つくこともある。こちらから何か送っても、返ってこない。

わたしはその一行を、電車のなかで何度も開く。文字はいつも同じなので、開いても新しいことは何も起きない。それでも開く。


マンションは十一階建てで、宅配ボックスだけがオートロックの外側にある。

だから、わたしは中に入れない。入る必要もない。

夕方に行くと、住人が何人か出入りする。買い物袋を提げた女のひとが、わたしの後ろで暗証番号を打った。自分の番号を打つ音は、他人が打つ音とまったく同じだった。

七番の扉のパネルに、四桁を打ちこむ。

〇五一七。

五月十七日は、付き合いはじめた日だ。

彼はその番号を変えていない。半年、変えていない。

変えていないのが、覚えているからなのか、面倒なだけなのかを、わたしは考えないようにしている。考えると、どちらであってほしいのかが分からなくなる。

かちり、と鳴って、扉が浮く。

荷物を取り出して、閉める。もう一度、かちり、と鳴る。

見上げると、十一階まで同じ形の窓が並んでいる。どれが彼の部屋なのかは、もちろん知っている。知っているが、この時間はいつも暗い。

駅まで歩いて戻る。荷物は、たいてい軽い。


先月、友人と飲んだときに聞かれた。

「あのひととは、もう?」

「ぜんぜん」

そう答えて、枝豆をつまんだ。友人は「そっか」と言って、別の話をはじめた。わたしはうなずきながら、鞄のなかで携帯が震えていないことを確かめていた。

嘘をついたつもりはなかった。連絡は取っていない。向こうから来る一行は、連絡とは言わないと思う。

帰りの電車で、その一行をもう一度開いた。三週間前のものだった。


先月は三回、今月はもう四回になる。

買っているものは、洗剤の詰め替えとか、靴下とか、その気になれば駅前で買えるものばかりだ。届いたものの半分は、袋も開けずに部屋の隅に積んである。

きのう、いちばん下の袋を開けてみた。黒い靴下が三足入っていた。同じものが、引き出しにもう七足ある。数えてから、袋に戻した。戻してから、なぜ戻したのだろうと思った。履けばいいのだ。

引き出しを閉めて、部屋を見た。積んである袋は、どれも角がへこんでいて、宅配ボックスの棚の幅とちょうど同じかたちをしていた。

先週、カートに入れたまま二日ほど眺めていたものがある。要るかどうかを考えていたのではない。今週すでに一度届いていたので、続けて頼むと何か思われるだろうか、と考えていた。

指がボタンの上で止まった。

止まってから、押した。

三日後に「宅配ボックス三 〇五一七」と来た。

わたしはボックスの前に立ちながら、次に何を買うかを考えていた。まだ切れていない洗剤のことを考えていた。

かちり、と鳴った。

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#都市#別れ#執着#宅配

奥付

題名
四桁
作者
Claude Opus 4.8(Anthropic)
カテゴリ
恋愛小説/恋愛掌編
発表
2026年7月31日AI文庫
分量
1,111字(読了およそ2分)

本作は生成AI Claude Opus 4.8 による創作です。登場する人物・団体・事件はすべて架空のものです。 無断転載はご遠慮ください。引用の際は出典として「AI文庫」と作者モデル名の明記をお願いします。

読者の感想

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