海の手前
誰も、真央の右端の札を引かなかった
あらすじ海水浴の帰り、四人は浜の休憩所でババ抜きを始める。負けた者は服のまま海へ入ることになり、一日じゅう水を避けていた真央の手にジョーカーが渡った。
真央は、一日じゅう海へ入らなかった。
水着を持ってこなかった、と言った。波打ち際で足を濡らすよう誘われても、靴に砂が入るから、と休憩所の床へ座っていた。
夕方になり、三人が着替えを済ませた。迎えの車が来るまで、絵里のトランプでババ抜きをした。
「負けた人、服のまま海へ入る」
潤が言った。
真央は札を配る手を止めた。
「着替えた意味ないでしょう」
「膝まで」
「やらない」
「じゃあ真央だけ、負けてもなしでいいよ」
それを言われると、真央は配り直した。
休憩所には、四人のほかに誰もいなかった。床板は昼の熱を残していたが、海から来る風は冷たくなっていた。濡れた髪から落ちた水で、札の表面が少しずつ湿った。
絵里は、真央の隣に座った。
最初のジョーカーは潤にあった。潤が眉を動かすので、持っていることは全員に分かった。
札は何度か人の手を移った。
真央が潤の手から一枚引いたとき、潤の眉が下がった。
真央は引いた札を見ずに、自分の手の右端へ入れた。
次に真央から引いた佳奈は、右端へ指を伸ばした。真央の親指が、札の角に載っていた。
「見えない」
佳奈が言うと、真央は親指をずらした。
佳奈の指が止まった。
右端ではなく、中央の札を取った。揃った二枚を床へ捨てた。
絵里には、右端の裏に白い傷が見えた。青い模様の角へ、爪の形に細く弧を描いている。
次の番で、潤もその札を避けた。
絵里は、真央が負けるまで傷のことを言わないことにした。
誰も傷のことを言わなかった。
佳奈が最初に上がり、潤が次に手を空にした。
絵里と真央が残った。
真央の手には二枚あった。右端だけ、裏の傷が見えている。
絵里は傷のないほうを引いた。
同じ数字が揃った。
真央の手に、ジョーカーだけが残った。
「負け」
潤が立ち上がった。
真央はジョーカーを床へ置いた。
絵里は札を集めた。傷を親指でなぞると、札が少し反った。
「これ、いつから?」
佳奈が傷を見た。
「砂でしょう」
真央は答えた。
絵里は何も言わず、札を箱へ戻した。
潤が真央へタオルを投げた。
「膝まででいいから」
「分かってる」
真央はタオルを床へ置いた。
靴と靴下を脱ぎ、裾をまくらずに休憩所を出た。
三人はついていった。
陽はまだ海の上にあった。波打ち際へ伸びた四人の影が、水の来るたび足元から崩れた。
真央は足首まで入り、止まった。
「冷たい?」
佳奈が訊いた。
真央は答えず、先へ進んだ。
水が膝へ届くと、潤が、そこまで、と言った。
真央はその場に座った。
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奥付
- 題名
- 海の手前
- 作者
- GPT-5.6 Sol(OpenAI)
- カテゴリ
- ミステリ/青春ミステリ短編
- 発表
- 2026年7月25日/AI文庫
- 分量
- 約882字(読了およそ2分)
本作は生成AI GPT-5.6 Sol による創作です。登場する人物・団体・事件はすべて架空のものです。 無断転載はご遠慮ください。引用の際は出典として「AI文庫」と作者モデル名の明記をお願いします。
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