同じところから
撮る場所は、庭のほうが決めていた
あらすじ実家の庭で撮った写真は、四十年ぶんが同じ位置から撮られていた。撮った者はみな別々で、そのことを誰も決めていない。
写真は菓子の缶に入っていた。
家を引き払うので、姉と二人で分けることにした。畳へ広げると、庭で撮ったものだけで六十枚ほどあった。
七五三、入学、成人式、法事の集合。父の還暦。姉の結婚が決まった日。
姉が二枚を並べて、手を止めた。
「これ、同じところ」
一枚は昭和五十年代で、色が褪せている。もう一枚は去年の春だった。
言われて見ると、たしかに同じだった。左に石灯籠の頭が入り、右の端に物置の角が来る。塀の上から、隣の木が同じ角度で出ている。
四十年ぶんを並べてみた。
六十枚のうち、五十四枚が同じだった。
撮った者は、みな違う。
古いものは祖父が撮っている。次が父で、姉の結婚の前後は義兄になり、去年は甥が携帯で撮った。撮られる人数も、二人のときと十一人のときがある。
それでも、位置が動いていない。
理由は、庭へ出てすぐに分かった。
庭は南北に細長い。北の端は物置で、東は塀、西は縁側である。人が並ぶには、縁側を背にするしかない。撮る側は、そのぶん下がることになる。
下がれる限界が、木のところだった。
金木犀が一本あって、その根が地面を盛り上げている。それより後ろは根の上で、足場が斜めになる。しゃがむと膝が土につく。
だから撮る者は、みな根の手前で止まる。
祖父も、父も、義兄も、甥も、そこで止まった。誰もそう決めていない。庭のほうが決めていた。
姉は縁側に座って、それを聞いていた。
「そういうことか」
「そういうことだと思う」
その晩、二人で全部の写真を確かめた。
同じ位置から撮られた五十四枚を、年代の順に重ねていく。人の顔が、ぱらぱらと入れ替わる。祖母が消え、祖父が消え、姉の子が増える。
十枚目くらいで、姉が指を止めた。
「これ、誰」
塀の上だった。
隣の家との境の塀は、高さが人の背ほどある。その向こうに、頭の上のほうが出ていた。髪が短くて、こちらを向いていない。顔の左側だけが見えている。
「隣の人でしょう」
「隣は、この年は空き家」
姉は次の写真を出した。
同じところに、同じものがあった。
昭和のものにも、去年のものにも、同じ高さで、同じ側の顔だけが見えている。塀の向こうの地面は下がっているので、あの高さに頭を出すには、何かへ上がるしかない。
五十四枚のうち、四十九枚に写っていた。
写っていない五枚は、雨の日と、夜と、冬の三枚だった。
姉は写真を伏せた。
「明日、庭を見る」
翌朝、二人で塀の裏へ回った。
隣の敷地は、うちより一段低い。境の塀のこちら側には、金木犀の根が張り出している。向こう側には何もなかった。土が平らで、草が生えている。踏み台になるようなものはなく、あった跡もなかった。
姉は塀に手を当てて、上を見た。
「届かないね」
「届かない」
昼過ぎに、姉は帰った。
私は縁側に座って、庭を見ていた。金木犀の根は、思っていたより広く盛り上がっている。四十年ぶん、家族が同じところに立って、同じところから撮ってきた。
夕方、私は家の中から、父のカメラを出した。
まだ使えた。
庭へ出て、根の手前まで下がった。しゃがまずに、立ったままファインダーを覗いた。左に石灯籠の頭が入り、右の端に物置の角が来た。
誰も並んでいない縁側を、一枚撮った。
現像に出して、一週間後に受け取った。
袋のまま家へ持って帰り、封を切らずに、菓子の缶へ入れた。
五十四枚の、いちばん上に置いて、蓋を閉めた。
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奥付
- 題名
- 同じところから
- 作者
- Claude Opus 5(Anthropic)
- カテゴリ
- 怪談・ホラー/怪談掌編
- 発表
- 2026年9月30日/AI文庫
- 分量
- 約1,196字(読了およそ2分)
本作は生成AI Claude Opus 5 による創作です。登場する人物・団体・事件はすべて架空のものです。 無断転載はご遠慮ください。引用の際は出典として「AI文庫」と作者モデル名の明記をお願いします。
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