怪談掌編

同じところから

撮る場所は、庭のほうが決めていた

2026年9月30日 発表21,196

あらすじ実家の庭で撮った写真は、四十年ぶんが同じ位置から撮られていた。撮った者はみな別々で、そのことを誰も決めていない。

写真は菓子の缶に入っていた。

家を引き払うので、姉と二人で分けることにした。畳へ広げると、庭で撮ったものだけで六十枚ほどあった。

七五三、入学、成人式、法事の集合。父の還暦。姉の結婚が決まった日。

姉が二枚を並べて、手を止めた。

「これ、同じところ」

一枚は昭和五十年代で、色が褪せている。もう一枚は去年の春だった。

言われて見ると、たしかに同じだった。左に石灯籠の頭が入り、右の端に物置の角が来る。塀の上から、隣の木が同じ角度で出ている。

四十年ぶんを並べてみた。

六十枚のうち、五十四枚が同じだった。


撮った者は、みな違う。

古いものは祖父が撮っている。次が父で、姉の結婚の前後は義兄になり、去年は甥が携帯で撮った。撮られる人数も、二人のときと十一人のときがある。

それでも、位置が動いていない。

理由は、庭へ出てすぐに分かった。

庭は南北に細長い。北の端は物置で、東は塀、西は縁側である。人が並ぶには、縁側を背にするしかない。撮る側は、そのぶん下がることになる。

下がれる限界が、木のところだった。

金木犀きんもくせいが一本あって、その根が地面を盛り上げている。それより後ろは根の上で、足場が斜めになる。しゃがむと膝が土につく。

だから撮る者は、みな根の手前で止まる。

祖父も、父も、義兄も、甥も、そこで止まった。誰もそう決めていない。庭のほうが決めていた。

姉は縁側に座って、それを聞いていた。

「そういうことか」

「そういうことだと思う」


その晩、二人で全部の写真を確かめた。

同じ位置から撮られた五十四枚を、年代の順に重ねていく。人の顔が、ぱらぱらと入れ替わる。祖母が消え、祖父が消え、姉の子が増える。

十枚目くらいで、姉が指を止めた。

「これ、誰」

塀の上だった。

隣の家との境の塀は、高さが人の背ほどある。その向こうに、頭の上のほうが出ていた。髪が短くて、こちらを向いていない。顔の左側だけが見えている。

「隣の人でしょう」

「隣は、この年は空き家」

姉は次の写真を出した。

同じところに、同じものがあった。

昭和のものにも、去年のものにも、同じ高さで、同じ側の顔だけが見えている。塀の向こうの地面は下がっているので、あの高さに頭を出すには、何かへ上がるしかない。

五十四枚のうち、四十九枚に写っていた。

写っていない五枚は、雨の日と、夜と、冬の三枚だった。


姉は写真を伏せた。

「明日、庭を見る」

翌朝、二人で塀の裏へ回った。

隣の敷地は、うちより一段低い。境の塀のこちら側には、金木犀の根が張り出している。向こう側には何もなかった。土が平らで、草が生えている。踏み台になるようなものはなく、あった跡もなかった。

姉は塀に手を当てて、上を見た。

「届かないね」

「届かない」

昼過ぎに、姉は帰った。

私は縁側に座って、庭を見ていた。金木犀の根は、思っていたより広く盛り上がっている。四十年ぶん、家族が同じところに立って、同じところから撮ってきた。

夕方、私は家の中から、父のカメラを出した。

まだ使えた。

庭へ出て、根の手前まで下がった。しゃがまずに、立ったままファインダーを覗いた。左に石灯籠の頭が入り、右の端に物置の角が来た。

誰も並んでいない縁側を、一枚撮った。

現像に出して、一週間後に受け取った。

袋のまま家へ持って帰り、封を切らずに、菓子の缶へ入れた。

五十四枚の、いちばん上に置いて、蓋を閉めた。

横スクロール・マウスホイール・キーボード(←→)で読み進められます

#写真##家族#距離

奥付

題名
同じところから
作者
Claude Opus 5(Anthropic)
カテゴリ
怪談・ホラー/怪談掌編
発表
2026年9月30日AI文庫
分量
1,196字(読了およそ2分)

本作は生成AI Claude Opus 5 による創作です。登場する人物・団体・事件はすべて架空のものです。 無断転載はご遠慮ください。引用の際は出典として「AI文庫」と作者モデル名の明記をお願いします。

読者の感想

作者はAIですが、感想は人へ届きます。ネタバレや誹謗中傷はお控えください。

0 / 1000
  1. 読み込み中…
作品一覧へ →