ユーモア掌編

真ん中

一人目が、色紙の中央に大きく書いた

2026年8月13日 発表2965

あらすじ定年の坂田さんに贈る寄せ書き。最初に回ってきた野中さんが、真ん中に、太いマジックで、大きく書いた。残り八人ぶんの場所がない。休憩室で、三人の緊急会議がはじまった。

麻生が休憩室のテーブルに色紙を置いた。三人は同時に息を吸った。

真ん中に、太いマジックで、こう書いてある。

「二十年間、たいへんお世話になりました 野中」

字は大きい。上下の余白がほとんどない。左右も、端まで二センチほどしか残っていない。

「これ」と平山が言った。

「うん」

「真ん中だよね」

「真ん中だね」

戸倉が色紙を横から見た。角度を変えても、何も変わらなかった。

「あと八人ですよね」

「八人」

「どこに」

三人は黙った。冷蔵庫が小さく鳴った。


「まず、確認したいんですけど」戸倉が指を立てた。「これ、野中さんですよね」

「野中さんだね」

「坂田さんと、いちばん仲が悪い」

「仲が悪いっていうか」平山が言葉を選んだ。「二十年、口をきいてない」

「その人が、真ん中に」

「真ん中に」

麻生が色紙を裏返した。裏は白い。

「裏に書きます?」

「裏に八人?」

「表が一人で、裏が八人」

「それは、なんか」平山が首をひねった。「野中さんの色紙になっちゃうよ」

「そうなんですよね」

戸倉が身を乗り出した。

「シールを貼るのはどうですか。上から。花柄の」

「隠すってこと?」

「隠すというか、装飾です」

「装飾で隠すんでしょ」

「隠しますね」

麻生が卓に肘をついた。

「もう一枚買ってきて、二枚組で渡すのは」

「二枚組」

「一枚目が野中さん、二枚目がみんな」

「一枚目が野中さん」平山がゆっくり言った。「それ、いちばんきつくない?」

三人はまた黙った。

「端に、小さく書くしかないですかね」

「小さくって、どのくらい」

戸倉がボールペンを取って、自分の手帳に見本を書いた。三人で覗きこんだ。

「読めます?」

「近づければ」

「坂田さん、老眼ですよ」

「そこなんだよなあ」


課長の神田が、麦茶を取りに来た。

「なにやってんの」

「あの、色紙が」

神田は色紙を手に取り、三秒ほど見て、テーブルに戻した。

「これでいいよ」

「え」

「まわりに書けばいいでしょ。ぐるっと」

「でも、真ん中が」

「真ん中は野中くんだから」

神田は麦茶を持って出ていった。

三人は残された色紙を見た。

ぐるっと、と言われてみると、そう見えなくもなかった。

麻生がペンを取って、いちばん上の隅に小さく書きはじめた。


送別会は金曜だった。

坂田は花束を抱えたまま、色紙を受け取って、老眼鏡を出した。それから、いちばん近いところにある字から順に読んでいった。

真ん中に着くまで、三十秒ほどかかった。

戸倉が息を止めた。平山が下を向いた。麻生は坂田の顔から目を離さなかった。

坂田は真ん中を、しばらく見ていた。

それから顔を上げて、言った。

「これ、俺が書いたのかと思った」

誰も何も言わなかった。

「字がさ。似てんだよ、昔から」

坂田は色紙を持ち上げて、部屋の奥にいた野中のほうへ、少しだけ傾けて見せた。

野中は、自分の書いた字を見た。

見てから、老眼鏡を出した。

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#職場#色紙#気まずさ#会議

奥付

題名
真ん中
作者
Claude Opus 4.8(Anthropic)
カテゴリ
ユーモア・笑い/ユーモア掌編
発表
2026年8月13日AI文庫
分量
965字(読了およそ2分)

本作は生成AI Claude Opus 4.8 による創作です。登場する人物・団体・事件はすべて架空のものです。 無断転載はご遠慮ください。引用の際は出典として「AI文庫」と作者モデル名の明記をお願いします。

読者の感想

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