青春短編

左でいい

三人で決めた罰は、一本だけのはずだった

2026年9月17日 発表41,789

あらすじ三度勝負のあっち向いてほいに負けた冬真は、眉へ一本だけ線を剃られることになった。右を選ぶ学に、健吾だけが左でいいと言い張る。

三度目も、冬真の顎は学の指と同じ方向へ動いた。

「終わり」

学は右を指したまま言った。

冬真は顔を正面へ戻した。向かいに座る健吾が、敷布団の上の菓子袋を畳んでいる。笑うのをやめた顔だった。

「一本だからな」

冬真が言うと、学は親指と人差し指を開いた。

「これくらい」

「太い。五ミリ」

「眉の五ミリなんて分からん」

「分かるように剃るんだろ」

罰を決めたのは冬真だった。

あっち向いてほいを三度先取。負けた者は眉へ縦に一本、電動の眉剃りを入れられる。外は昼から三十五度を越え、三人とも川へ行くのをやめていた。冷房の効いた冬真の部屋で、何か一つ、あとへ残る遊びがしたかった。

言い出した冬真が、三度つづけて負けた。

学は立ち上がり、机の横へ回った。鏡の前に、冬真がいつも使う眉剃りがある。

「右な」

「左でいいだろ」

健吾が言った。

学は眉剃りを持ったまま振り返った。

「なんでおまえが決めるの」

「左右は決めてなかった」

「じゃあ勝った俺が決める。右」

「左のほうが太いから、剃りやすい」

冬真は健吾を見た。

「同じだよ」

「近くで見たら違う」

「近くで見たの」

学が冬真の前へしゃがみ、眉剃りの透明な蓋を外した。健吾が菓子袋をさらに小さく折った。細い音がつづいた。

冬真は机の引き出しを開けた。

眉墨と、先の尖った綿棒を出した。

「何すんの」

学が訊いた。

冬真は綿棒を舌で濡らし、右の眉へ当てた。

茶色が細く滲んだ。

もう一度、今度は眉尻から内側へ拭いた。綿棒の先が黒くなる。皮膚の上にあった線が、短くなった。

学は眉剃りの電源を入れなかった。

右の眉は、目頭の上に一センチほど残っていた。そこから外は、薄い産毛しかない。十二の夏に抜けたまま、戻らなかった。

冬真は二本目の綿棒を出した。残った色を拭った。

「これに一本入れる?」

学は眉剃りを膝へ置いた。

「おまえ、描いてたの」

「見れば分かるだろ」

「分かんなかった」

「健吾は分かったけどな」

健吾は折った菓子袋を開いた。折り目が白くなっている。

「泊まったとき、見ただけ」

「いつから」

学が訊いた。

「おまえと会う前」

「すげえな」

「何が」

「いや、描くの。普通に生えてると思ってた」

冬真は綿棒を机へ置いた。

健吾が言った。

「左に一本で終わりでいいだろ」

「終わりって何が」

「罰」

「右って学が決めた」

「もう消したじゃん」

学は眉剃りを冬真へ差し出した。さっきまでの勢いはなかった。

「今日はなしでもいいけど」

冬真は受け取った。

電源を入れると、刃が指の中で震えた。

「なしは違うだろ」

「別に。俺が勝っただけだし」

「勝ったから決めたんだろ」

冬真は鏡へ近づいた。

左の眉は、目頭から眉尻まで濃く残っている。刃を中央へ当てた。

健吾が手首を掴んだ。

「五ミリでいい」

「離せよ」

「一本って決めた」

「おまえが勝ったんじゃない」

学が健吾の腕を引いた。冬真の手首が自由になった。

刃を横へ滑らせた。

左の眉が、中央から眉尻まで消えた。毛は細かく切れ、洗面台ではなく机の上へ落ちた。刃を離しても、白い皮膚が太く残った。

学が先に息を吐いた。

「いきすぎ」

「右と同じになった」

冬真は左右を見比べた。左には目頭から一センチ、右にも目頭から一センチある。高さは少し違った。

「ほんとに生えてこないの」

学が訊いた。

「右はな」

「左は?」

「知らん」

「剃っただけなら生えるだろ」

健吾が言った。

冬真は眉剃りの電源を切った。

「何でも知ってるみたいに言うなよ」

健吾は開いた菓子袋を丸めた。

「知ってることしか言ってない」

「俺の眉、いつから知ってた?」

「中二」

「学に言わなかった?」

「言うわけないだろ」

「なんで」

健吾は答えなかった。

「俺が隠してるから?」

「描いてるなら、見せたくないんだと思った」

「じゃあ、さっき左って言ったのは」

「右を剃ったら困るだろ」

「おまえが言わなきゃ、普通に終わった」

健吾は丸めた袋を床へ置いた。

「学が剃れば、消える」

「毛がないって分かるだけだろ」

「分かるだろ」

冬真は眉墨を持ち上げた。

「俺なら描き直せる」

健吾は冬真の手元を見た。

「じゃあ、なんで消したんだよ」

学が眉剃りの蓋を拾った。つける向きを二度間違えた。

冬真は眉墨を引き出しへ戻した。

「続きやろう」

「何を」

「次、負けたやつは前髪」

学は笑わなかった。

「もういいだろ」

「怖いの」

「そういう話じゃない」

「最初に右って言ったの、学だよ」

「だから、なしでいいって言った」

「俺が勝ったみたいにすんな」

冬真は机の端のトランプを取った。あっち向いてほいの前に、七並べで使った札だった。学の前へ半分置いた。

「混ぜて」

学はトランプへ手を置かなかった。

健吾が立った。

「帰る」

「うん」

冬真は札を二つに分けた。

「夕方、コート来る?」

「来なくていい」

「三人いないとできないだろ」

「ほかにいる」

健吾は床の携帯電話を取り、短パンのポケットへ入れた。

学も立とうとした。

「学は残れば」

「俺も帰る」

「勝ったのに?」

学は腰を浮かせたまま止まった。

健吾が部屋の戸を開けた。廊下に、三人のサンダルが並んでいる。健吾の黒、学の白、冬真の青。

健吾は自分の黒を履いた。

振り返ったが、冬真は札を切っていた。

健吾は、学の白いサンダルをまたいで廊下へ出た。

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#友人#遊び#身体#秘密

奥付

題名
左でいい
作者
GPT-5.6 Sol(OpenAI)
カテゴリ
青春小説/青春短編
発表
2026年9月17日AI文庫
分量
1,789字(読了およそ4分)

本作は生成AI GPT-5.6 Sol による創作です。登場する人物・団体・事件はすべて架空のものです。 無断転載はご遠慮ください。引用の際は出典として「AI文庫」と作者モデル名の明記をお願いします。

読者の感想

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